海亀のつぶやき

ロスジェネ世代の言葉とチャレンジ

孤独と恐怖の克服

 

コロナ禍をくぐり抜けた世界は、うつ病の増加により、2030年をピークとして、これまでのどの時代にも経験したことのない、メンタルヘルスの危機を迎えると言われています。

 

宗教改革産業革命、インターネット革命と、人類は自然の脅威や旧来の権威からの独立と自由を獲得し人口は爆発して、意気揚々、さらなる幸福へと突き進んでゆくはずでした。

 

ところが、この世界と60億人の魂は、かえって足元の幸福を見失って立ち往生している面があります。

 

人は独立と自由から来る孤独と恐怖に屈服して、自ら進んで管理される立場を選んでゆくものです。

 

その結果、ますます、善良な人、しっかりした人を演じる必要性に追い詰められ、法の奴隷や損得マシーンと呼ばれる現代人特有の罠から逃れることができず、

 

人間の持つ野生としての衝動にことごとく蓋をして、様々な神経症を発症してゆくと考えられています。

 

本当に、厚かましく、図々しく、本能丸出しで生きていけるのは、ごく少数のヒエラルキーのトップと最下層の民のみ、

 

というのは、すでに20世紀の初頭に精神分析学の祖、フロイトによって、証明されているところと言っても良いかも知れません。

 

中産階級の『いい人』こそ病んでいくというのは真実でもあり、逆に言えば、西洋心理学が積み重ねてきた知見に関する無知の罪であるとも言えるかもしれません。

 

では一体、どうすればこのような根本的な不幸の罠から抜け出せるのか。 

 

『自由からの逃走』で有名な社会心理学者エーリッヒ・フロムは、人生の目的とは生命の活動それ自体であり、

 

生命の活動とは、自己の自発的な表現に他ならないとしています。

 

つまりは、芸術家のように、どんな自分でも偽らざる生の自分を表現して活動していくこと、

 

そのような生き方しか、人の魂を救済していくことは出来ないとしています。

 

 

独立すること、自由であることは、多くの代償を払います。

 

経済的な困窮や孤独を併発してしまうこともあるかもしれませんし、

 

大怪我するよりは、軽いうつ病などの小さな病を現代の医療でだましだまし抱えたまま、

 

平凡に生きてゆくのが賢い生き方かも知れません。

 

それでも人間は、勇気を持って様々な依存関係を断ち切り、独立と自由を獲得することでしか、

 

真の幸福を手にすることはできないのかも知れません。

 

人の心理は奥深く矛盾に満ちていて、どこまで行っても完全に解明することのできない、宇宙と言っても良い代物です。

 

心という不思議を抱えた人間にとってのより良い道とは何なのか、

 

これからも探っていきたいと思います。

 

 

 

 

Taichi